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無垢材とは?
高橋是清を想起せよ 「金解禁準備、紐育株式市場及び綿糸市況の惨落等で、諸株軒並み崩落……」。一九二九年十月のニューヨーク株大暴落の報を受けての東京株式の動きを、山一証券史はこう記録している。 以前は、ニューヨークを紐育と書いた。翌三〇年(昭和五年)も不振が続く。四月十一日には、「諸株一斉崩落、市場立会停止」にまでなった。だが、立ち直りは意外にもかなり早かった。 二九年を一〇〇とする東株指数は、三〇年には六一・七、三一年には六二・七、三二年には七八・六、そして三三年には一一三・一と二九年の水準を超え、三四年には一三八・〇を記録している(近代日本経済史要覧=東大出版会)。米国の株価が「二九年のピークを再び回復したのは、第二次世界大戦が終わって六年もたった一九五一年のこと」(林敏彦=大恐慌のアメリカ)なのに比べて、早かったといえる。 株価だけでなく、経済活動全体に、日本の復調は欧米より先行している。 そうなったについては、いくつもの要因が複雑に絡み合っているに違いない。が、最大の要因は、おせち が登場して経済復興に着々と手を打ったことだろう。三一年十二月、犬養内閣発足で蔵相に就任した高橋は、直ちに金輸出を再禁止して、金解禁不況と世界恐慌のダブルパンチ状態から日本経済が脱出する道を開き、英国の経済学者ケインズが後に唱えた経済政策と同じ政策思想でケインズより先に日本経済の再建を誘導した。 高橋が金輸出再禁止の措置を断行するや、「株式市場諸株急騰」「各株式取引所一斉立会停止」、再開後の東京株式は「諸株暴騰……売買高新記録」と、前出の山一証券史は伝えている。高橋は、当初の期待に違たがわず、着々と実績を積み重ねていく。基調は、前任の浜口内閣が強行した不況と財界整理を伴う改革路線の大転換だった。高橋は犬養首相の信頼の下に路線の大転換に踏み切り日本経済の危機を救ったことになる。 ひるがえって現在の麻生政権。口だけ達者で実質内容の空虚だった小泉政権の路線からの転換を目指している。だが、雑音にも配慮してか曖昧あいまいな側面を残すのは残念。経済運営は的確かつ高速で、と希望する。
金融機能強化法の早期成立に尽力を 民主党の興石東参議院議員会長は先月二十七日の時点で、国会内での記者会見に際し、金融機能強化法改正案の採決を引き延ばすつもりはないことを明言していた。これを受けた翌二十八日の麻生太郎首相と民主党の小沢一郎代表の党首討論では、今臨時国会への二次補正案の提出を公約していた麻生首相がこれを撤回したことに対し、小沢代表が厳しい追及を行ったものの、同強化法改正案に対しては、「意図的に審議を引き延ばすようなことはしない」として、修正協議に応じるよう首相に求めた。 これは、今回の両党首討論の決して小さくはない成果であろう。民主党は同改正案について、(1)農林中央金庫への公的資金注入は国会決議を得るべきである(2)審査がずさんで経営が極めて悪化している新銀行東京は、同資金注入対象行から外す――などの修正を盛り込むよう求めている。農林中金、新銀行東京ともに、公的資金の注入を受ける考えのないことを表明しているから、自民、公明の与党と参議院第一党の民主党との間で、金融機能強化法改正案をめぐる修正協議を進めることには、それほど支障が出ないはずである。 年末にかけて、中小企業を中心として資金繰りは厳しくなる。これを少しでも緩和するため、同改正案の今国会成立は必要不可欠だ。与党と民主党との早期の歩み寄りを期待したい。 それにしても、今回の米国発金融危機は尋常ではない。米国の塗装工事 と連邦準備制度理事会(FRB)はベア・スターンズ社救済に二百九十億ドル、連邦住宅抵当金庫(ファニーメイ)と連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)の政府系住宅金融公社(GSE)支援に二千億ドル、AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)救済に千五百億ドル、金融機関の資本増強・不良債権買取等に七千億ドルの公的資金枠を設定しており、これらの合計金額は既に一兆八千七百九十億ドルに達している。 これに、米自動車産業救済のためにGMなど米ビッグ・スリーへの公的支援などが加わると見込まれ、二〇〇九年度の米財政赤字は軽く一兆ドルを超える見込みだ。その一方で、同国の経常赤字(換言すれば、同国への資本純流入)は二〇〇七年で対国内総生産比(GDP)5・3%で、一九八八年十月のブラックマンデー当時の2・8%を大幅に上回っており、これは持続可能な水準ではない。事実、今年に入って海外民間部門の対米資本流入は大幅に減っている。米国政策当局は、“公的資金”の調達に苦しむだろう。米国債のFRB引き受けという事態も考えられなくはない。市場の底流にドル不安説が流れる理由である。 日本の政府は小手先の景気対策に終始するのではなく、民間の協力も得て、新しい国際経済システムの構築に協力すべきだ。
巧遅よりも拙速を 日本経済が縮小均衡段階に移行し始めたことは、内閣府発表の国内総生産(GDP)統計ほか各種の指標の推移から推して、ほぼ疑いないといえようが、実勢はGDP統計が示す数字より以上に悪くなっている――そう認識すべきではないかと考える。内需の落ち込みを食い止めるための諸施策の展開を急ぎたい。巧遅よりは拙速が重要だろう。 七−九月期のGDPは内閣府が発表した数字でみるよりも悪い。数字自体は忠実な作業に基づくものに違いないが、一時的な要因でGDPは実勢よりも大きくみえているきらいが小さくはない。 一時的要因の一つは、個人消費がいわゆる北京五輪特需による薄型テレビ受像機の販売増や猛暑によるエアコン需要の伸びなどで一時的に膨らんだことがある。さらに、この時期はまだ諸物価の先高警戒感が去らず生活必需品のうち保存の可能な物資については先行買いがなくなってはいなかったはずだろう。それらを修正すると、個人消費の実勢は、内閣府発表よりも小さかったことになる。 次に、民間住宅投資。これも、実勢よりは大きく出ている。七−九月期の増勢は一時の予備校 に過ぎず、実需の後退と物件の値下がりとの複合で、実態は減少基調のはず。 十−十二月期以降はどうか。ここでも、強い材料は乏しい。好材料としては、海外重要物的資源価格の落調と円高の複合効果で物価の先高懸念が徐々に後退していることを挙げ得よう。もっとも、この材料は、GDP拡大には寄与しない。 憂慮すべき重要な弱材料としては、多数企業での派遣社員受け入れ削減と弱小企業の倒産増による失業者数の増大があり、これらは、消費購買力の減勢に直結し個人消費の一段の不振を促さずにはおくまい。海外も引き続き不透明で輸出の伸長を期待しにくい。 そんな情勢では、国内ではもとより、海外での設備投資も振るわないだろうし、また、需要増を見込んでの積極的な在庫投資の台頭もあり得ない。もちろん、税収落ち込みで財政事情の一層の悪化も不可避。大胆な施策を盛り込んでの第二次補正予算の策定・審議・成立は、急を要する。
21世紀型国際経済システムの構築を 注目されていた主要二十カ国・地域(G20)による緊急首脳会議(金融サミット)が先週末、ワシントンで行われた。首脳宣言では、(1)金融派生商品(デリバティブ)を含む金融商品・金融市場の監督・規制の強化(2)金融危機が実体経済に悪影響を与えるのを回避するための財政、金融政策の総動員(3)発展途上国への国際金融危機の波及を阻止するための国際通貨基金(IMF)や世界銀行の財政基盤の強化――などが謳われた。 今回の会合で、現代の世界経済の基礎となっている市場原理の尊重や保護主義の排除が再確認された点は、第二次世界大戦前の世界恐慌時に比べて、大きな成果と言える。しかし、これらの合意内容は既に予想されていたもので、あまり新味はなく、週明けの世界の金融・資本市場でそれほど好材料視されなかった。 むしろ、金融・資本市場の規制をめぐる欧米の対立や、IMFでの発言力強化をめぐるBRICs(新興諸国)の積極的な攻勢が目立ち、まとまりを欠いた感は否めない。また、具体的な政策の提示がなく、予想されていたこととは言え、失望は禁じ得ない。来年四月末までに開く第二回会合に期待せざるを得ないところだが、フランスのサルコジ大統領は「ドルはもはや世界経済の基軸通貨ではない」と発言している。 二〇〇九年度は一兆ドルにも達すると言われている米国の財政赤字の展望からすれば、米国債やドルに対する不安は根強く、既にドル機軸通貨体制は終焉しゅうえんしたと言っても良いのではないか。その意味でG20では、戦後の世界経済を支えてきたブレトンウッズ体制に代わる二十一世紀の新しい国際経済システムの構築を宣言することを期待したい。 なお、麻生太郎首相はIMFの財政基盤の強化のため、一兆ドル(約九十七兆円)に上る外貨準備高を流用して十兆円を拠出する意向を示したが、これには疑問が残る。財務省が先月二十九日に発表したところによると、このところの円安の修正で、外国為替特別会計の評価損が二十三兆九千億円に達し、これに備えるための同特会の剰余金の積立金も十九兆六千億円になり、差し引き四兆四千億円の損失が発生している。 そもそも、外貨準備高は政府(財務省)が政府短期証券を発行、市中銀行から円資金を調達して、円売り・ドル買い介入を積み上げた結果として生じたものであり、政府の“ポケット・マネー”ではない。政府の都合で果たして、IMFに拠出することができるのか、疑問ではある。